東海道一の大親分がいた。清水の次郎長である。
ある時、勝海舟と会見した。
その勝海舟曰く
「親分には二十八人衆を始め六百人くらいの子分がいると聞くが、
親分のために死ぬこ とが出来る子分は何人いるか?」
普通の親分なら
「あいつとあいつ!」
と言うように指折り数えるのだが、次郎長は
「わしのために死ぬ子分はいない。だが、わしはどんな末端の子分
のためでも死ぬことが出来る!」
勝海舟曰く
「普通の親分は『俺のために死んでこい』と言うが、あなたは違う。だ
から大親分になれたのだ!」
と感銘したと言う。
これがいまの政治家と違う気質を持ち、気骨な人間にしかできない
生き方であり、この生き方が侠客の親分である。
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